短頭種気道症候群と、術後の苦しみを減らす手術の話
札幌市中央区アネス動物病院、代表の石塚です。
4月に入り、新たな飼い主様との出会いや、手術後のご相談を多くいただいています。
当院のことを「麻酔センター」と掲げているせいか、
「予防医療や一般診療はしていないのでは?」と誤解されることがありますが、
アネス動物病院は、あらゆる症状やお悩みに対応する総合動物病院です。
どうぞ安心してご相談ください。
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さて、今回は手術と麻酔の質についてのお話です。
たとえば、去勢手術や避妊手術。
どこの病院でも受けられる一般的な手技ですが、「どこで受けても同じ」ではありません。
中でも麻酔と術後管理の違いは、驚くほど大きな差を生みます。
手術後、痛みで泣き叫ぶように目を覚ます動物たちの姿――
これは、実際に多くの病院で見られている現実です。
もちろん、時間が経てば落ち着きます。
でも、「それが普通」と思ってしまっているなら、本当にそうなのか、見直してみてほしいのです。
私は全国の動物病院で麻酔の指導を行っています。
北海道では、当院を含めてたった2院。
私が主催する麻酔教育プログラム「VES」で学んでいる先生も、道内に数名しかいません。
“痛みの少ない、安全な麻酔”を提供できる病院は、まだまだ限られているのが現状です。
だからこそ、一度話を聞きに来てください。
きっと、あなたの大切な犬や猫のためになるはずです。
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先日、短頭種のワンちゃんが来院されました。
避妊手術と同時に、「短頭種気道症候群」に対する外科治療(外鼻孔拡大、軟口蓋切除、喉頭小嚢切除)をご検討されていました。
ただ、手術は当院ではなく、もとの病院で行うという判断になりました。
その選択を否定するつもりはありません。
ですが、少し切ない気持ちになったのも事実です。
というのも、同居の先住犬も以前の病院で同様の手術を受けていましたが――
私が診察したとき、「これは手術を受けていないのでは?」と思ってしまうほど、
明らかな効果や変化が感じられませんでした。
拡大されたはずの外鼻孔もほとんど変化がなく、呼吸の苦しさが強く残っており、
思わず「この状態はかなり悪いですね。夏前にはきちんと手術した方が良いかもしれません」とお伝えしたほどです。
おそらく、避妊手術と一緒に“ついでに少しだけ”追加された程度の処置だったのでしょう。
でも、それでは本質的な改善にはつながりません。
私は「再手術」というよりも、
「最初から適切な手術をし直すべき状態」だと判断しました。
しっかりご説明し、今度こそ正しい医療を受けてほしいと願ってお話ししましたが、
最終的には以前の病院ですべてを行うことになりました。
非常に残念な結果です。
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私たちは「安くて早い手術」ではなく、
命に真剣に向き合う手術を提供しています。
だからこそ、価格に差が出るのは当然です。
たとえば、短頭種気道症候群の手術(外鼻孔拡大、軟口蓋切除、喉頭小嚢切除)では、
術前検査・麻酔管理・手術すべて含めておよそ15万円程度。
決して安くはありませんが、
そのぶん一頭一頭の状態を見極め、最適な医療を提供する責任を背負っています。
でも、そこにある“違い”が、なかなか伝わらない現実があります。
安いから悪いとは限らない。高いから良いとも限らない。
けれど、アネス動物病院が他の病院より費用が高いのは、
「適当に済ませる医療は絶対にしない」からです。
私たちは、選択してくれた飼い主様の
「この子を任せる」という気持ちに、必ず応える責任と覚悟を持っています。
その覚悟の重さが、結果にも、費用にも表れるのだと信じています。
それでも――
現実には、最終的な選択が“金額”だけで決まってしまうこともある。
もちろん、それぞれのご事情もある。全てを否定するつもりはありません。
ただ、「愛する我が子の命に、何を基準に選ぶのか」
その視点だけは、どうか見失わないでほしいのです。
命の重さに真剣に向き合う動物病院が、北海道にもっと増えていくことを願って。
そして、私たちアネス動物病院は、その先頭で向き合い続けます。
2025.04.17