動物の「積極的な治療」について
アネス動物病院 代表 石塚友人
私は完璧な獣医師ではありません。
信頼していただいたのに救えなかった命もあります。
どれだけの命が自分の手から溢れていったか、数えきれません。
それでも毎日、多くの命と向き合う中で、
どうしても伝えなければならないことがあります。
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最近、ある言葉を目にしました。
「動物に積極的な治療をせずに看取ることは、諦めではない」
確かに正しい。
私も看取りを提案することはあります。
でも――
その選択肢を与えることの重さを、本当に理解しているだろうか。
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19歳、20歳。
「もう高齢だから」と積極的な治療を勧められなかった子たちがいます。
諦めきれず、アネスへ来院。
来た時は心肺停止。
すぐに蘇生。
蘇生後脳症との戦い。
急性肺障害。
腎不全。
原因を特定し、原疾患を治療する。
1週間で酸素ケージへ。
チューブ給餌。
下痢との戦い。
2週間後、退院。
また自分でご飯を食べ、日常に戻る。
年齢は関係ない。
原疾患に対応できるなら、諦めなければ戻れる世界がある。
もちろん、残りの時間が数日のこともある。
数ヶ月のこともある。
数年穏やかに過ごせることもある。
私は、そのすべてを見てきました。
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「延命しても意味がない」
「無理に頑張らせるだけ」
本当にそうだろうか。
その“先”を見たことがあるのか。
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情報発信がしやすい時代になった。
それは素晴らしいことだ。
でも同時に、違和感もある。
普段の診療のほとんどが
ワクチン、爪切り、予防、去勢避妊。
それは大切な医療だ。
でも――
心肺停止からの蘇生後管理を何例経験しているのか。
人工呼吸管理を何例やってきたのか。
急性腎障害、多臓器不全、ICU管理。
その世界を知らないまま、
「高齢だから無理」
「積極治療はかわいそう」
「延命に意味はない」
そう語る。
経験していない世界を、
経験したかのように断言する。
それは危険だ。
優しさのように聞こえる言葉が、
実は可能性を閉ざしていることもある。
これは同業批判ではない。
覚悟の話だ。
命の瀬戸際を何度も見た人間にしか見えない景色がある。
私はその景色を見てきた。
だから簡単に線は引かない。
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すべてを救えるなんて思っていない。
救わないほうが動物が楽になる場面もある。
でもそれは、
やれることを提示し、
可能性を検証し、
そのうえで選択することだ。
最初から諦めることではない。
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北海道の飼い主様へ。
もし「もう無理かもしれない」と言われたとき、
本当にそれが限界なのか。
一度、考えてほしい。
私は奇跡を売っているわけではない。
でも、可能性を簡単には捨てない。
希望を奪わない。
それがアネス動物病院の姿勢です。
2026.03.02
