かかりつけがお休みなので来ました
札幌市で年中無休の総合動物病院、アネス動物病院の石塚です。
日々、救える命と向き合っています。
そして今日も、胸が締めつけられるような言葉に出会いました。
「かかりつけが休みなので来ました」
──この一言。
たったこれだけなのに、私たちにとってはとても悩ましいのです。
①軽く診てほしい。薬だけ欲しい。
②かかりつけに戻るから、応急処置だけしてくれればいい。
③不安だからしっかり診てほしい。
④ただ大丈夫か知りたいだけ。
同じ言葉でも、その裏にある意図はバラバラです。
でも私たちは、どんな命にも真剣に向き合う。
軽く診るなんて、そんなことはできません。
中には「なんでこんな検査するんだ」「やりすぎだ」と言われる方もいます。
でも私たちは、命を守るためにやっています。
“軽い気持ちで”命を診ることなんて、絶対にできません。
そして、もっと悔しいのは──
検査をした結果、とんでもない病気が見つかることです。
「月に1回は通っていた」
「かかりつけの先生からは何も言われなかった」
「年だから手術は無理って言われた」
…本当にそれで納得していいんですか?
“あなたができないだけで、他の病院なら治療できます”
これは、現場にいる私たちだからこそ分かる真実です。
獣医師という職業は、飼い主様にとって絶対的な存在。
だからこそ、無責任な言葉で希望を奪わないでください。
診断できない、治療できない、それはあなたの限界であって、
動物の限界ではありません。
そして私たちは、助けられる命を前にしてこう言われます。
「かかりつけの先生に一度相談します」
……正直、やるせないです。
見逃され、放置され、適切な治療を受けられなかった命を前にして、
なぜまたそこに戻るのか。
私にはその信頼関係はわかりません。
でも、信頼が命を奪うこともあるという現実を、
どうか知ってほしいのです。
今ならまだ助かる。
今ならまだ希望がある。
私たちは、それを伝えたくて診察しています。
この北海道の現実を、どうすれば変えられるのか。
命の前では、感情論や義理人情ではなく、結果がすべてです。
今日もまた、自分の無力さと、現実の壁に打ちひしがれながら、
それでも命と向き合い続けています。
2025.05.01