気管支鏡を使った診断が増えています
札幌市中央区の総合動物病院、アネス動物病院の石塚です。
当院では内科・外科をはじめ、さまざまな診療科に対応しておりますが、今回は「呼吸器科」についてお話しします。
呼吸器科でよく見られる症状としては、
・咳
・気道閉塞
・呼吸困難
などがあります。
特に咳と嘔吐の区別が難しいケースも多く、「吐いていると思っていたら実は咳だった」ということもしばしば見られます。
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呼吸困難を訴えたわんちゃんのケース
先日ご紹介いただいたわんちゃんは、**「吸うのが苦しそう」**という主訴でした。年齢や犬種からある程度の鑑別は予想できますが、来院時には落ち着いており、症状がわかりにくい状況でした。
各種検査(レントゲン・心エコーなど)を実施しましたが、明らかな異常は確認できず、**僧帽弁閉鎖不全症(stage B2)**以外は特筆すべき所見はありませんでした。
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上気道閉塞の原因はさまざま
吸気時の努力呼吸が見られる場合、以下のような疾患が鑑別に挙げられます。
・短頭種気道症候群
・喉頭麻痺
・口腔内腫瘍
・喉頭蓋後傾
また、気胸や気管虚脱など、上気道閉塞に似た呼吸パターンを示す疾患も含めて、詳細な評価が必要になります。
このようなとき、レントゲンだけではわからないケースも多いため、当院では
・CT検査
・気管支鏡検査
・血液ガス分析
といった、より高度な検査を組み合わせて診断を行っています。
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今回の診断と所見
ご紹介いただいたわんちゃんには以下の検査を実施しました:
・喉頭観察
・血液ガス分析
・気管支鏡検査
その結果、軽度の喉頭蓋後傾が確認されました。
麻酔下では軽度であっても、興奮時や強い吸気努力がかかると、呼吸状態が一時的に悪化することが考えられます。
そうしたとき、空気を呑気して胃がガスでパンパンに膨らむといった症状が見られることもあります。
なお、気管支鏡では気管虚脱や炎症所見は認められず、今回は気管支肺胞洗浄(BAL)は実施しませんでした。
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命に関わる呼吸器診療
呼吸器疾患は、症状の変化が急激であり、命に直結するケースもあります。
そのため、CT・気管支鏡・人工呼吸管理といった高度な検査・治療体制が整っていることが重要です。
アネス動物病院では、命を守る医療に対応するべく、呼吸器診療においても万全の体制を整えております。
「いつもとちがう呼吸かも?」と感じた際は、お早めにご相談ください。
2025.04.13