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アネス動物病院

獣医療

発見が遅れてしまうタイプの鼻腔腫瘍

こんにちは。札幌市中央区で外科、整形外科、麻酔、そして多岐にわたる内科疾患の集中治療を行っているアネス動物病院代表・石塚です。

当院の整形外科は関節外科が中心で、現在は骨折対応などの骨手術はまだ体制が整っていません。
あしからずご了承ください。

今回は、開業して2年の間に診断が難しかった「鼻腔腫瘍」の2症例についてご紹介します。




一見、ただの「元気・食欲低下」

今回の2頭は、いずれもチワワやパピヨン系のMIX犬で、鼻が長くないタイプの小型犬でした。

主な症状は以下の通りです:
• 元気や食欲の低下(ただし波がある)
• 発熱なし
• 鼻詰まり・鼻血・呼吸の異常なし
• 神経症状もなし

身体検査や問診でも、特に決定的な所見は見つかりませんでした。



検査を重ねても「何も出てこない」

血液検査ではCRPがやや高め。でもそれ以外に異常はなく:
• 消化器症状なし
• 関節炎、低血糖、電解質異常、貧血なし
• 超音波検査でも明らかな所見なし
• 関節液も正常
• コルチゾールも問題なし(アジソン病否定)

ここで「胃腸炎かも?」と判断し、消化管運動亢進薬で経過観察することに。

一時的に調子は良くなったものの、しばらくして再び食欲不振。再来院され、また同じく大きな異常は見つからず…。



ステロイドが効いた…でも、何かがおかしい

「もしかすると免疫疾患?」と疑い、低用量のステロイドを試すと、劇的に改善。元気・食欲ともに回復しました。

ですが、心のどこかで強い違和感がありました。

「ステロイドが効く=何か炎症があるはず。でもこの反応、もしかして…脳?」

ただし神経症状は見られないし、CTやMRIをしても見つからないかもしれない…。そんな思いで、飼い主様と相談しつつ経過をみることにしました。



翌日、発作。そして診断へ

「症状があるとすれば、そろそろ本体が顔を出すかもしれません」
そうお話した翌日、発作を起こして来院

すぐにCTとMRIを実施。そこでようやく判明したのは——

鼻腔尾側にできた腫瘍が、嗅球(=脳)に浸潤していたこと。

ステロイドで改善していたのは、脳浮腫が一時的に軽減されていたためと考えられます。



鼻腔腫瘍の症状が「ゼロ」だった2頭

特筆すべきは、鼻腔腫瘍の典型的な症状が全く見られなかったことです。
• 鼻詰まりや出血なし
• 呼吸の異常なし
• 見た目や触診でも何も感じない

そして2頭とも、腫瘍の位置はまったく同じく「嗅球(脳のすぐ手前)」でした。

治療としては、放射線治療+抗てんかん薬が中心になります。



最後に:なんか変だな?と思ったら

今回のように、「元気がない・食欲がない」といった一見ありふれた症状の裏に、深刻な病気が隠れていることがあります。

CTやMRI検査は麻酔が必要なためハードルが高いと感じられるかもしれませんが、早期発見のためには非常に有効です。

アネス動物病院では、迅速なCT検査も対応可能です。
「なんか変だな?」と感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。

2025.04.10